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夏の高温の日射熱が徐々に地中に伝わって、その熱が地中に蓄えられることで建物下の地中温度は上昇します。夏の終わり頃までに十分蓄えられた床下地中熱を、冷めさせないように封じ込める工夫をして、冬にもその熱を活用できるような構造にしているのが「地熱住宅」です。これを特に「伝導型地熱住宅」といいます。
これは、千葉県成田市にあった玉川ホームズモデルハウスで、建物地下の温度測定結果です。 外気温度が高くなるにつれて、日射と気温で地表面が暖められてきている様子がお分かり頂けると思います。
7月20日と9月20日を比較すると、地表面温度が地中を伝わっているのも分かりますね。 建物の下には「地熱」が蓄えられていきます。この熱を、冬まで持ち越す、つまり、季節が冬へと移行するまで建物地下を冷やさないような工夫をします。
左の写真は、ベタ基礎の外側に「断熱材」を施工してある状態です。「基礎断熱」と言います。 今までの住宅は、床下換気口があるので、床下は外気がそのまま入り込みます。冬になれば当然床下が冷やされます。 建物下地中を冷やさないためには、床下空間は室内と考える必要があります。 したがって、基礎断熱施工をします。 床下は室内ですから、土台の防蟻処理なども、化学物質の使用は禁止です。
地中を冷やさない工夫として床下も室内と考えて基礎から断熱しても、建物そのものが冷えてしまうと効果はなくなります。このため、建物は高気密高断熱住宅にしなければなりません。 また、断熱性能を最も損なう「窓」には、高気密・高断熱サッシの使用が必要不可欠です。 これは、室温が床下地中温度を決定づけ、またその地中温度で室温が支えられるという相互関係があるからです。 したがって、「地熱住宅」になるか、単なる高性能住宅に終るかは、窓の性能にかかっているのです。一般の高気密・高断熱サッシの役割は、暖房熱を逃がさないことです。一方、「地熱住宅」における窓の役割は、夏から持ち越した地中温度を冷やさず、暖房なしでも生活できる家にすることです。 役割が明確に違うのです。
アイヌのチセ住宅では、冬へと移行する間に建物下の地中熱を冷えさせない工夫として、「床作り」と「アイヌの掟(=1年中、土間でチョロチョロと少しだけ薪を燃やし続けること)」を実施していました。 現代の住宅では、床下で火をおこすことはできないので、下記の工夫をしています。 「床作り」⇒基礎断熱(基礎の外側に断熱施工します) 「アイヌの掟」⇒床下システム(家の中の廃熱を利用します)
左図が「地熱を利用するシステム=床下システム」です。これは「冬モード」の状態です。 このシステムの場合、冬は9月10日からです。夏に暖められた地熱を冷やさないため、9月10日から準備開始です。 原理は簡単! どんなに高断熱・高気密住宅にしても、やはり2階天井付近には「暖かい空気」がたまっています。それを「床下システム」で吸い込み、床下へ放出します。 その熱が、床下の基礎コンクリートに蓄熱され、地中が「徐々に冷え込む」ことを防ぎます。 そう、天井付近にたまっている熱を再利用するのです(一般には再利用できませんよね)。 これこそが、アイヌの人達が利用していた原理を応用したものです。 結果として、私達の建てる住宅内で温度測定をすると、下記のようになります。
左図は、地熱住宅の「地中から室内にかけての」温度測定結果です。外気温度がマイナス2.9℃でも、室内は18℃前後になっています。建物下が冷え込まない状態であることがお分かり頂けると思います。 ここまでご説明すると、よく受けるご質問が2つあります。 1)本当に「地熱利用」の効果があるのですか? 2)地熱を利用しているのではなく、室内からの熱が地下に逃げているだけではないですか?というご質問です。 2)のご質問は、特に建築士の方からいただきます。 1)本当に「地熱利用」の効果があるのか?この疑問を解消するためには、やはり体感して頂くしかありません。特に、真冬に体験して頂いた方からはこのようなご質問はありません。 しかし、ここで文章にてご回答する必要もありますね。 下記の測定データーをご覧下さい。
これは、冬中暖房しなかった住宅の温度測定記録です。 もちろん、日中は太陽の光が家の中に入りますから、そういう意味では、熱源がゼロではありませんが、自然エネルギーだけを利用しても、グラフからお分かりになる通り、床下の基礎表面温度は15度前後に保たれています。外気温度(下の赤色部分)に比べ、室温が低下していないことが分かりますね。 これが「地熱利用」なのです。 ただし、残念なことに、この効果は「土地の条件」によって変わります。 日射取得量、つまり日当たりの良さによって変化してしまうのです。 上記のI邸は「日当たりが良い立地」でした。ですから、暖房を全く使用しなくても冬を越すことができたのです。 ところが、日当たりの悪い場所では、「補助暖房」が必要になってきます。 冬の間は、20度前後の温度設定でエアコン(または蓄熱式暖房機【深夜電力利用】)を24時間稼動していただいております。
確かに、冷暖房費には電気代がかかります。冬場はエアコンの暖房運転、そして夏場はエアコンの除湿運転(27度前後)で24時間稼動していただくのが望ましいのです。 安心してください。高断熱・高気密住宅では、今 あなたが想像されているほどの電気代はかかりません。 ご参考までに、実際に地熱住宅にお住まいの方の電気使用量をご覧ください。 冷暖房にかかる消費電力を正確に測定するため、エアコン(冷暖房)用に専用の電気メーターを設置して測定した結果です。 年間の消費電力は「1560.1KWh」、電気代に換算すると、34,322円程度でしたす。(1kwh=22円での計算です!) 夏と冬にエアコンを24時間稼動しつづけ、家全体(居間だけではないですよ)をほぼ同じ温度に保つための冷暖房費用が、1年間でたった3万5千円程度です。この電気代は高いですか? *日当たりの良い土地では、暖房費がもっと削減できます。 これが「地熱住宅」です。
これは、次の点から説明できます。 ①まず、冬場、基礎表面温度より、地中温度の方が高いということをグラフでご確認下さい。 このグラフは、地熱住宅(千葉県成田市にあったモデルハウス)の1年間の温度測定結果において、「基礎(土間)表面温度」から「居間の温度」を引いた数値をグラフにしたものです。 ●基礎表面温度-居間の温度 数値がプラスである場合、基礎表面温度が居間の温度より高いことを意味します。 熱は高い方から低い方へ移動するので、基礎表面温度が居間の温度より高いと、基礎表面温度(つまり地熱)を利用して生活していることになります。つまり、居間は地中から温度をもらっていることになります。 下記のグラフを見ると、「10月~4月」は【居間は床下地中から熱をもらっている】ことになります。 もしも、「室内から地中へ熱が逃げている」のであれば、居間温度より基礎(土間表面)温度の方が低いはずですね。(熱は高い方から低い方へ移動するので) また、逆に、夏場を見ると、冬とは逆に、基礎(土間表面)温度が居間の温度より低くなっています。つまり、夏場は【居間は床下地中から地熱(冷熱)をもらっている】ことになります。 それではグラフをご覧ください。